鏡を見て「ニキビのように押し出せば治るのではないか」と考える人は少なくありません。しかし、炎症性粉瘤の内部構造は通常のニキビ(毛穴の皮脂詰まり)とは根本的に異なります。粉瘤は皮膚の下に「嚢腫(のうしゅ)」と呼ばれる袋状の組織が形成され、その中に本来皮膚から剥がれ落ちるはずの古い角質や皮脂がヘドロ状に蓄積している良性腫瘍です。
強い力で外から圧迫して炎症性粉瘤を潰すと、皮膚の表面に膿が出る前に、皮下の薄い袋が内部で破裂してしまいます。袋の中に密封されていた角質や皮脂が皮下組織へ一気に漏れ出すと、生体防御反応として激しい異物肉芽腫性炎症が惹起されます。これにより、炎症範囲が数倍に拡大し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や筋膜炎といった重篤な皮下感染症を併発する危険性が極めて高くなります。
さらに、強い力で組織を挫滅させることで傷口が不規則に裂け、治癒後に凹凸のある目立つ瘢痕(キズアト)や色素沈着が半永久的に残る原因にもなります。自力で絞り出す行為は百害あって一利ありません。