植物の茎や枝の内部には、根から吸い上げた水分を送る「道管」と、葉で光合成した栄養分を全身に届ける「師管」、そして細胞分裂を司る「形成層」が緻密に走っています。一般的な工作用はさみは、2枚の薄い刃で対象を挟み込んで押し切る構造(剪断応力のみに依存)のため、切断時に植物の細胞壁をグシャリと押し潰してしまいます。
道管が潰れた切り口は吸水機能が著しく低下し、水揚げ不良を起こします。さらに、潰れて組織が破壊された粗い切断面は乾燥が遅れ、空気中や土壌中に浮遊する糸状菌(カビ)や細菌にとって格好の侵入経路となります。これが「切った後に枝先から茶色く枯れ込んでいく」現象の正体です。
対して園芸用はさみは、片刃が鋭利な包丁のように機能し、もう片方の受刃が枝を支えながら滑らかに切り込む「バイパス構造」や、極限まで薄く仕上げられた刃先によって、細胞壁を破壊することなくスパッと切断します。滑らかな切り口は植物自らの癒傷組織(カルス)の形成を促し、ダメージを最小限に抑えて病気の感染リスクを激減させます。