放課後の教室を覗くと、かつてのような絵の具の匂いは漂ってこない。響くのは、擦れるトラックパッドの乾いたクリック音とキーボードの打鍵音だ。生徒たちは日常的にPinterestを開き、世界中のタイポグラフィや展覧会のフライヤーを貪欲にインプットしている。感性の参照先が「隣のクラスの看板」から「世界の最前線アート」へと拡張されたのだ。
かつて学校の壁面を覆っていたのは、予定調和なイラストと手書きの文字だった。しかし今の渡り廊下には、あえて文字を極小に絞り込んだミニマリズムや、緻密な幾何学模様を用いたグリッドシステムが平然と並ぶ。美意識の解像度が跳ね上がった結果、学校内の掲示空間は一種のアートギャラリーのような緊張感を帯び始めている。