転機は1993年。業界の巨人であるサムソナイトによる買収だ。この統合は、ブランドの立ち位置を根本から再定義することになった。巨大グループのリソースが注ぎ込まれた結果、何が起きたか。自社研究所での徹底した落下テスト、ハンドル引き戻し試験、そして石畳を何キロも模走させるホイール摩耗試験の共有である。
今日、市場を席巻するハードサイドスーツケースの数々は、プレミアムブランドで培われた射出成形技術と衝撃分散リブ構造を惜しみなく流用している。素材にはしなやかさと復元力を兼ね備えたポリプロピレンやポリカーボネートを採用。親会社の最先端ラボから供給されるエンジニアリングの恩恵を受けながら、プライシングは若年層やライトトラベラーが躊躇なく手を伸ばせる設定に抑えられた。合理性と高品質の幸福な結婚。これこそが快進撃のエンジンの正体だ。