沈黙を破ったのは昨年末のことだった。混合ダブルスで世界ランキング1位に君臨し、数々の栄冠を手にしてきた渡辺が描く青写真には、誰も予想し得なかった急進的なアプローチが含まれていた。水面下で進められていた新ペア結成のプロジェクト。関係者への徹底取材によって浮かび上がったのは、徹底した「前衛・後衛の役割解体」という戦術的野心だ。
現代のバドミントンにおいて、男女のスピード差を前提としたクラシカルなポジショニングは限界を迎えつつある。渡辺はそこにメスを入れた。新パートナーとの練習では、従来の枠組みを捨て去り、双方が前後左右に高速でスイッチしながら連続攻撃を浴びせるトータルバドミントンを模索している。世界バドミントン連盟(BWF)のトップツアーを制覇するため、かつてないスピードと打点の高さを追求する過酷なラリー練習が、連日非公開のコートで繰り広げられている。