多くの受験生が抱く最大の疑問が、「一見すると接点の薄そうな危機管理とスポーツ科学が、なぜ三軒茶屋という同一キャンパスに集められたのか」という点です。大学関係者の証言や当時の設置認可構想を紐解くと、そこには2010年代半ばの日本社会が直面していた切実な構造的要請が浮かび上がってきます。
背景にあったのは、2011年の東日本大震災をはじめとする大規模自然災害の頻発、サイバー攻撃の激甚化、そして2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致決定でした。日本大学は、130年を超える歴史の中で培った法学・医学・理工学・体育教育のリソースを再編し、「有事の社会防衛」と「平時の心身の健康・活力創出」を両輪とする次世代リーダーの育成を企図したのです。つまり、国家や社会基盤のレジリエンス(回復力)を高めるという共通の目的意識のもとに設計された兄弟学部といえます。
広大なグラウンドを必要とする従来の体育学部系キャンパスとは異なり、あえて世田谷区下馬という都心近接エリアを選定した点にも計算が働いています。官公庁や警視庁、防衛省、各種スポーツ統括団体、メディア企業が集中する都心へのアクセスを確保することで、現役実務家を招いた実践的シンクタンク機能をキャンパス内に内包させる狙いがありました。敷地面積約1万6,000平方メートルという限られた都市空間に、法廷教室やシミュレーションルーム、最新鋭の実験プールや動作解析アリーナを高密度に垂直集約させた構造は、まさに現代の都市型高等教育の実験場となっています。