本作が巻き起こしたムーブメントは、映画館やテレビ画面の中だけに留まりませんでした。ロケ地となった地域社会や音楽シーンにも巨大な影響を及ぼしました。
映画のロケ地・香川県高松市庵治町(あじちょう)の軌跡
映画版の主要ロケ地となった香川県庵治町は、瀬戸内海を臨む風光明媚な港町です。サクとアキが夕日を見つめた「皇子神社」のブランコ、サクがスクーターで疾走した海岸通りの防波堤、そしてふたりが語り合った「雨島庵(カフェ)」のロケセットなど、数々の名シーンがここで撮影されました。
公開当時、人口約6,000人の静かな町に年間数十万人を超えるファンが押し寄せ、日本における「フィルムツーリズム(聖地巡礼)」の先駆的事例となりました。地元住民や商工会が中心となって「純愛の聖地庵治・観光交流館」を整備するなど丁寧な保存活動が行われ、公開から20年以上が経った現在も、穏やかな瀬戸内の海を背景に当時の空気に触れようとする旅行者が後を絶ちません。
心を揺さぶる2大主題歌の誕生秘話
本作の感動を決定づけたのが、映画・ドラマそれぞれのために書き下ろされた珠玉の主題歌です。
映画版主題歌である平井堅『瞳をとじて』は、映画の脚本を読み込んだ平井自身が「残された側の底知れぬ喪失感」をテーマに紡ぎ出した至極のバラードです。オリコン年間シングルランキング1位を獲得し、カラオケチャートでも長期にわたり首位を独占。哀切を帯びたファルセットとメロディラインは、セカチューの代名詞として日本人の集合的記憶に刻まれました。
対するドラマ版主題歌、柴咲コウ『かたちあるもの』は、柴咲自身が作詞を手掛け、「先立っていくアキがサクへ遺す最期の祈りと感謝」を女性目線から描いたアンサーソングです。オリコンチャートで60万枚を超える大ヒットを記録し、ドラマのエンディングで流れるこの楽曲が視聴者の涙腺を激しく刺激しました。「残された男性の視点」と「旅立つ女性の視点」という対比が、作品世界の奥行きをより一層深めています。