インターネット上では「紙の新聞は全滅する」「大手新聞社もまもなく破綻する」といった極端な言説が飛び交っています。しかし、産業財務の観点から検証すると、この言説には明確な盲点が存在します。
第一の盲点は、大手新聞社が保有する莫大な「不動産資産」の存在です。朝日新聞社(有楽町マリオン、中之島フェスティバルタワーなど)や読売新聞社(大手町本社ビル、銀座周辺不動産など)は、大都市の一等地に巨大なオフィスビルや商業施設を保有しています。本業の新聞事業が大幅な減益に陥ったとしても、年間数百億円規模の安定したビル賃貸収入・不動産事業収益が下支えしており、倒産リスクは極めて低いのが実情です。
第二の盲点は、ニュースの一次発信源としての代替不能性です。Webメディアやまとめサイト、ポータルニュースに流れる社会・政治・国際ニュースの多くは、依然として新聞社や通信社が配置した数千人規模の記者網が生み出しています。この圧倒的な一次情報収集能力を、純粋なWeb専業メディアが自前で代替することはコスト面からも不可能です。
ただし、会社が不動産収益で生き残ることと、記者や社員の「給与水準が高止まりすること」は別問題です。不動産部門の黒字で報道部門の赤字を穴埋めする構図が続けば、経営陣は報道部門の人件費削減に一層強い圧力をかけることになります。「会社は存続するが、記者の年収は一般企業並みに下がり続ける」というシナリオこそが、直視すべき現実です。