競馬という競技を観戦し、楽しむ私たちが最も自覚すべきは、競走馬が「愛玩動物(ペット)」ではなく「経済動物(家畜)」として誕生しているという冷酷な前提です。社会学における動物倫理の観点から見れば、競走馬と人間の関係には常に二重基準(アンビバレンス)が横たわっています。名前を呼び、グッズを買い、熱狂的な愛情を注ぎながら、経済的価値を失った瞬間に視界から消去されることを暗黙の了解として受け入れてきた歴史があります。
しかし、目を背けて「知らなかった」と済ませる時代は終わりました。競馬産業が持続可能なエンターテインメントとして存続するためには、ファン一人ひとりが現実のサプライチェーンを正しく理解し、自らの関わり方を判断する基準を持つことが求められます。
支援に向いている人・慎重になるべき人の判断基準
- 引退馬支援・里親制度に向いている人: 競馬を「消費するギャンブル」としてだけでなく、馬という生命に対する敬意と責任を共有したい人。毎月の定額寄付(月額数千円〜)を無理のない範囲で長期的に継続できる経済的・精神的余力がある人。
- 慎重な関わり方が求められる人: 「すべての競走馬を殺処分から救うべきだ」という純粋すぎる理想論に囚われ、産業自体の経済構造を否定してしまう人。あるいは、一時的な感情の高ぶりで個人オーナーとして引き取りを申し出たものの、月10万円以上の維持費を十数年間払い続ける覚悟ができていない人。
すべての馬を天寿まで飼育することは、現行の経済システムでは不可能です。だからこそ、JRAや競馬主催者による売上の一部を原資としたセカンドキャリア基金の拡充、乗馬需要の底上げ、そしてファンによる持続的な寄付文化の定着など、多層的なセーフティネットの構築が急務となっています。