ヒグマが持つ狡猾さと、食肉への執着を日本中に知らしめた現代の事件が、北海道標茶町および厚岸町で2019年から2023年にかけて発生した「OSO18(オソジュウハチ)」による連続乳牛襲撃事件です。
コードネーム「OSO18」と呼ばれた巨大ヒグマは、放牧中の乳牛計66頭(うち死亡32頭)を次々と襲撃しました。通常、ヒグマは生きた体重数百キロの成牛を単独で襲うことは極めて稀とされていましたが、OSO18は牛の背後から跳びかかって脊椎やアキレス腱を破壊し、生きたまま腹部や乳房の肉を貪り食うという残虐な捕食パターンを確立していました。さらに、監視カメラや人間が設置した箱わなを完全に察知して迂回し、痕跡をほとんど残さない驚異的な警戒心から「忍者グマ」と恐れられました。
2023年7月、釧路町で駆除された個体のDNA鑑定により、あっけなくOSO18本人であることが確認されました。推定年齢9歳、体重約330キロと大柄ではあったものの、倒された個体は爪や牙の摩耗が見られ、晩年はエゾシカ猟の残滓などを漁っていた実態が判明しました。この事件が残した最大の教訓は、「一度家畜や高タンパクな肉の捕獲方法を覚えたヒグマは、その成功体験を一生涯学習し続け、行動が不可逆的に凶暴化する」という点です。
2024年から2026年にかけての北海道ヒグマ出没最新ニュースにおいても、札幌市南区や旭川市、函館市などの都市部近郊において「人間を恐れない新世代のヒグマ(アーバン・ベア)」の出没が報告されています。過疎化に伴う緩衝地帯(里山)の藪化や、家庭菜園の放置果樹、生ゴミへの餌付きが原因となり、人間社会とヒグマの生息域の境界線が崩壊しつつある現実があります。