安全保障上の最大の焦点となっているのが、台湾有事の現実的リスクです。仮に台湾海峡で武力衝突や海上封鎖が発生した場合、日本のシーレーン(海上交通路)は致命的な打撃を受け、エネルギーや食料の輸入が麻痺することは防衛白書等でも繰り返し警鐘が鳴らされています。
こうした事態を抑止すべく、米国は超党派で厳格な対中規制を強化してきました。先端半導体製造装置の輸出規制、AI技術の移転制限、対中投資規制など、包括的なデリスキング政策が展開されています。日本も経済安全保障推進法に基づき、特定重要物資のサプライチェーン強靭化や基幹インフラの安全性確保を急速に進めています。
この政策的転換は、日本経済に直接的な影響を及ぼしています。長年にわたり中国市場の成長力に依存してきた素材・機械・電機メーカーは、拠点の分散や投資先の見直しを余儀なくされています。都内大手総合商社の戦略担当者は「中国市場からの完全撤退(デカップリング)は非現実的だが、最悪のシナリオを想定した二重サプライチェーンの構築は不可避の経営課題となった」と語ります。経済的相互依存が深かったからこそ、政治的対立がもたらす摩擦コストは莫大な規模に達しています。