なぜ初期の大阪市中学校給食は、あれほどまでに不評を買ってしまったのでしょうか。行政取材と当時の給食衛生管理基準を照らし合わせると、現場の調理師や栄養士の技術不足ではなく、衛生基準の厳格さとデリバリーシステムとのミスマッチという構造的要因が浮かび上がります。
文部科学省の学校給食衛生管理基準では、食中毒を防止するため、調理後から喫食までの配送時間が長い場合、おかずの芯温を急速に10度以下まで冷却して配送することが義務付けられていました。油分の多い揚げ物や煮物が冷蔵状態で届き、真冬であっても温め直す設備がなかったため、脂が白く固まり、食感が著しく損なわれていたのです。
さらに事態を悪化させたのが、2014年以降に進められた「選択制から全員喫食への強制移行」でした。家庭弁当を持参する自由が奪われ、美味しくないと感じる冷えた給食を食べざるを得なくなった生徒たちの心理的ストレスが、ネットやSNS上で「まずい」という激しい告発として爆発したのです。制度の性急な推進が、味覚面での準備不足を露呈させた典型的なガバナンスの失敗でした。