頭大仏の建築理由と経緯を紐解くと、そこには既存の記念建造物が抱えていた構造的課題と、建築家の鮮やかな逆転の発想が存在します。
この大仏自体は、真駒内滝野霊園の開園30周年記念事業の一環として2003年末に建立された、重さ約1,500トン、総高13.5メートルの石造大仏(釈迦牟尼仏)です。しかし、北海道のどこまでも果てしない大地と広大な霊園のスケール感のなかに置かれた大仏は、周囲の景観に対して唐突な印象を与え、視覚的な求心力を発揮しきれていないという課題を抱えていました。
2013年、開園30周年を経てさらなるシンボル空間の創出を模索していた霊園側から相談を受けた安藤忠雄氏は、現地に立った瞬間に驚くべきプランを提示します。それが「大仏を丘で覆い隠し、頭のてっぺんだけを外に見せる」という構想でした。
安藤氏は当時の回想や自著のなかで、「大仏が見えすぎるからありがたみが薄れる。隠すことによって、見えない全身を人々が心の中で想像するようになる」という趣旨の設計思想を明かしています。巨大な土木造成を行い、大仏を中心に直径数メートル単位のすり鉢状コンクリート構造物を構築。その周囲を緩やかな人工の丘で囲い込み、頂上部の円形開口部から頭頂部だけを露出させるという、前代未聞の「ランドスケープ・アーキテクチャ」が誕生しました。2015年末に竣工し、2016年に一般公開されるや否や、世界の建築界に大きな衝撃を与えることとなりました。