トップスターが劇団を去る際、記者会見で語られる言葉の裏には、タカラジェンヌならではの厳格な美学とプロフェッショナリズムが存在します。「なぜ今辞めるのか?」というファンの疑問に対し、歴代スターが明かしてきた退団理由の真相にはいくつかの共通項があります。
第一に、「体力の限界とパフォーマンスの維持」です。トップスターは大羽根(重さ10〜15kg以上)を背負い、毎公演ほぼ出ずっぱりの状態で歌い踊り続けます。極度のプレッシャーと過密なスケジュールの中で、最高のパフォーマンスをファンに届けることができる限界を、自ら冷静に見極めて引き際を決めるケースがほとんどです。
第二に、「作品との巡り合わせと目標達成」です。自分が宝塚で演じたかった憧れの役(『エリザベート』のトート、『ロミオとジュリエット』のロミオ、『ベルサイユのばら』のフェルゼンなど)を演じきったこと、あるいは劇団の節目となる周年イベントを成功裏に収めたタイミングを「集大成」と位置づけて退団を決断します。
第三に、「次世代への継承」です。宝塚歌劇団の最大の強みは「生徒が新陳代謝を繰り返すことで100年以上存続してきたシステム」にあります。トップスター自身が下級生時代に上級生の背中を見て育ったからこそ、自分が組を背負い尽くしたと感じた時、次の世代に最高の状態でバトンを渡すことが最大の責務であると捉えています。