「日本三大清流はどこにあるのか」「誰がどういう決め方をしたのか」という疑問は、旅好きの間でも長年議論の的となってきました。結論から言えば、環境省や国土交通省の公式告示に「三大清流の指定リスト」が存在するわけではありません。日本三大清流の成立背景には、昭和末期から平成初期にかけてのメディア報道と地域住民による清流保全運動の連動があります。
大きな転換点となったのは、1983年にNHKが全国放送した特集番組『土佐・四万十川~清流と魚と人と~』でした。ダムのない本流、アユやウナギ漁を営む伝統的な川漁師、増水時に水面下へ沈む「沈下橋」の風景が「日本最後の清流」として全国へ発信され、日本人の郷愁を強烈に刺激しました。時を同じくして、1985年に環境庁(現・環境省)が選定した「名水百選」に長良川(中流域)や柿田川湧水群が選ばれ、観光キャンペーンや各種メディアの企画を通じて「四万十川・長良川・柿田川」の3河川が「日本三大清流」として広く定着していった経緯があります。
つまり、単なる水の透明度ランキングではなく、「原生の自然が息づく長大河川(四万十川)」「都市生活と伝統漁法が共生する川(長良川)」「驚異的な湧水量と再生の歴史を持つ短小河川(柿田川)」という、日本の水環境を代表する3つの異なる象徴性が評価された結果なのです。