検索窓に打ち込まれる「エストロゲン増やす食べ物」という言葉の裏には、食事改善だけで若さを取り戻したいという切実な願いが透けて見えます。しかし、結論から言えば、食品をいくら摂取しても、萎縮を始めた卵巣の機能を若返らせてエストロゲンの分泌量を直接増やすことはできません。女性ホルモンの分泌は、脳の視床下部・下垂体から送られる性腺刺激ホルモンと、卵巣に残された原始卵胞の数によって緻密に制御されています。卵胞の数は胎児期をピークに減少し続け、40代以降に激減するため、食事でこの生物学的時計を巻き戻すことは不可能なのです。
では、なぜ「食事でホルモンが増える」という言説が定着しているのでしょうか。その背景には、植物性エストロゲンと呼ばれる成分が、体内のエストロゲン受容体に結合して「ホルモンに酷似した穏やかな働き」を示す作用があります。代表格がイソフラボンですが、ここで知っておくべきなのが大豆イソフラボン効果的な摂取法の落とし穴です。食品安全委員会が定める大豆イソフラボンアグリコンの1日摂取目安量上限は70〜75mg(特定保健用食品などでの上乗せは30mgまで)。納豆1パック(約35mg)と豆腐半丁(約40mg)でほぼ上限に達します。「体に良いから」と豆乳を毎日1リットルもガブ飲みすれば、かえって体内のホルモンバランスを攪乱し、月経周期の乱れや子宮内膜増殖のリスクを招く恐れすらあります。
さらに見過ごせないのが腸内細菌の個体差です。大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから、より強力なエストロゲン活性を持つ「エクオール」を体内で産生できる日本人は、成人で約50%、20代から30代の若年層では20〜30%程度にまで落ち込みます。つまり、半分以上の女性は、大豆をいくら食べても期待通りの恩恵を受けられていません。食事療法は体調維持の土台であり不可欠な要素ですが、「食事だけでホルモンを増産できる」という幻想は捨てる必要があります。