「風の電話」が国内外で広く知られる契機となったのは、メディアによる丁寧なドキュメンタリー報道でした。
特に2016年に放送された『NHKスペシャル 風の電話〜残された人々の声〜』は、受話器を握りしめて涙を流しながら亡き家族に語りかける遺族の姿を静かに記録し、第53回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞するなど社会的に極めて大きな反響を呼びました。言葉にならない悲しみを抱える人々の姿は、震災の風化を防ぐとともに、人間の本質的な愛と哀悼の深さを浮き彫りにしました。
さらに2020年には諏訪敦彦監督、モトーラ世理奈主演によって映画『風の電話』が劇場公開されました。震災で家族全員を失い広島の叔母のもとで育った少女ハルが、故郷の大槌町を目指してヒッチハイクの旅を続け、最後に風の電話に辿り着くというあらすじです。台本にセリフが書かれておらず、役者の即興表現によって生み出されたリアルな感情の吐露は、第70回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で国際審査員特別賞を受賞するなど国際的にも高く評価されました。
現在、この取り組みは「Wind Phone(ウィンド・フォン)」として世界中に波及しています。アメリカのカリフォルニア州やワシントン州、イギリス、アイルランド、イタリア、台湾など、世界各地の自然豊かな場所に、大槌町の風の電話にインスパイアされた電話ボックスが設置されています。天災だけでなく、新型コロナウイルス感染症による急な死別、自死、事故などで別れを告げられなかった世界中の人々にとって、共通のグリーフケアの象徴となっています。