宗達の『風神雷神図屏風』が日本美術の金字塔と称される最大の要因は、常識を打ち破る空間構成の妙にあります。
一般的な屏風絵では中央に主役を描くのが定石でしたが、宗達は画面の中央を広大な金箔の余白として大胆に空け、両端のギリギリに二神を配置しました。神々の体の一部をあえて画面外にはみ出させる(トリミングする)ことで、鑑賞者の視界を超えて広がる天空の無限の広がりと、風神が急降下し雷神が飛び出してきたようなスピード感を演出しています。
さらに注目すべきは、水墨画の伝統を応用した「たらし込み」技法です。墨や絵の具が乾ききらないうちに濃度の異なる別の墨や顔料を落とし、自然な滲み(にじみ)やムラを作り出すこの技法によって、二神が乗る雨雲の不穏な気配や立体感が驚くほど生々しく表現されています。