大涌谷一帯に足を踏み入れると、誰もが即座に実感するのが「ゆで卵が腐ったようなツンとした臭い」です。大涌谷の臭いの原因は、主成分である水蒸気に混ざってわずかに噴出している火山ガス成分にあります。
噴出ガスの中に含まれる代表的な成分が硫化水素(H₂S)と二酸化硫黄(SO₂)です。硫化水素は卵の腐敗臭、二酸化硫黄はマッチを擦ったときのような刺激臭を放ちます。これらは地下のマグマから揮発した硫黄分が地下水や岩石と化学反応を起こすことで生成されます。
注意しなければならないのは、これらのガスが高濃度になると人体に強い毒性を持つ点です。大涌谷の現地には環境省や神奈川県によって高精度の自動ガス測定器が複数配置されており、24時間リアルタイムで空間濃度が測定されています。
一般的に、硫化水素濃度が5ppmから10ppmを超えると健康被害のリスクが高まるため、現地では黄色や赤色の回転灯、警告アナウンスが即座に作動し、観光客を風上や待避所、屋内施設へと避難誘導するマニュアルが徹底されています。特に喘息などの呼吸器系疾患を持つ方や心臓に持病のある方、乳幼児は微量のガスでも発作を誘発する恐れがあるため、現地の掲示板でも厳格な注意喚起が行われています。