資格試験という制度は、心理学における「目標設定理論」において、自己効力感を高めるための極めて優れたスモールステップ(小さな成功体験の積み重ね)として機能します。しかし一方で、行動経済学が警告する「サンクコスト効果」や「不安のすり替え」に陥るリスクも孕んでいます。
学習者のなかには、「自分はまだ未経験だから、もっと資格を取って自信をつけてからポートフォリオを作ろう」と制作を先送りにしてしまう人が少なくありません。これは、心理的な防衛機制の一種であり、未完成な作品を他人に見られて評価される恐怖から逃れるために、資格という「安全なシェルター」に逃げ込んでいる状態です。ポートフォリオを作らない限り、Webデザイナーとしてのキャリアの扉が開くことは決してありません。
【明確な判断軸】資格取得がプラスに作用する人の条件
・完全未経験で何から手をつけてよいか分からない学習初期の人:体系的な出題範囲をペースメーカーとして活用し、学習習慣を定着させる目的に最適です。
・社内異動や公的入札に関わる企業への転職を狙う人:国家資格であるウェブデザイン技能士などの肩書が形式要件として効力を持ちます。
・知識の抜け漏れを洗い出したい実務1〜2年目の人:我流で身につけてしまったHTMLのマークアップや著作権法などの知識を、一度総点検して強固にする契機となります。
【警告】今すぐ資格取得を中断し、制作にシフトすべき人の条件
・すでに主要ツールの基本操作が一通りできる人:試験勉強に100時間を費やすなら、その100時間を実在する店舗のWebサイトリニューアル企画とポートフォリオ制作に充てるべきです。
・資格の取得数で採用を勝ち取ろうと考えている人:資格コレクター化は、現場の採用担当者から「実務で何が重要か分かっていない候補者」というネガティブなバイアスを持たれる要因になりかねません。