シーズン2最終回のラスト数秒、カメラは平穏を取り戻した病院の庭からテーブルの上へとパーンし、突風で吹き飛ぶトランプの束を映し出します。最後に机上に1枚だけ残り、画面を埋め尽くしたのは「JOKER(ジョーカー)」のカードでした。この演出の意味について、原作漫画と実写ドラマ版では明確なアプローチの違いが存在します。
原作者・麻生羽呂氏による原作漫画において、ジョーカーは「カード」としてではなく、意思を持つ謎の存在(冥府の渡し守)としてアリスの眼前に現れます。黒いモヤのような姿をした彼は、自らを神とも悪魔とも名乗らず、こう問いかけます。「私がお前たちには何に見える? 神か? 悪魔か?」。
原作のジョーカーは、ギリシャ神話のカロンのように「死者を冥界へと運ぶ中立の案内人」であり、決して敵でも支配者でもありませんでした。アリスが「ただの案内人(渡し守)だ」と見抜いたことで、彼は満足げにアリスを元の世界へと送り返します。
一方、佐藤信介監督が率いるNetflixドラマ版では、この対話シーンをあえて完全に排除しました。病院の庭に突如クローズアップされるジョーカーのカードは、「現実世界に戻ったと思っているこの世界自体が、実はまだジョーカーのゲームの中なのではないか?」という強烈なパラノイア(偏執病的一撃)を視聴者に植え付ける映画的ギミックとして機能しています。