歴史的には刃物による刺創や銃創といった鋭的穿通性外傷が典型的なブラウン・セカール症候群の発症原因とされてきましたが、平和な現代日本における臨床像は様相を異にします。
厚生労働省関連の研究班や主要大学病院の症例集積によると、国内で遭遇する原因の過半数は非外傷性、あるいは日常的な軽微な外傷を契機とするものです。具体的には以下の疾患群が主因を占めています。
最も多いのは、中高齢者に多発する頚椎症性脊髄症や頚椎椎間板ヘルニアに伴う圧迫性病変です。加齢変形によって狭窄した脊柱管内で、突出した骨棘や軟骨が脊髄の片側を選択的に圧迫することで不全型の症状を呈します。次いで、神経鞘腫や髄膜腫をはじめとする脊髄腫瘍、多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMO)などの脱髄性疾患、さらには脊髄硬膜外血腫や脊髄梗塞といった脊髄血管障害が続きます。
診断においては、日本整形外科学会および国際脊髄損傷学会(ISCOS)が定める脊髄不全損傷の診断基準(ASIA/AIS評価法)が用いられます。仙骨部(S4-S5)の感覚または運動機能が残存しているかを確認し、完全損傷(AIS A)と不全損傷(AIS B〜E)を峻別した上で、全感覚・運動機能のチャートを作成。MRI画像所見と神経学的所見を厳密に照合して確定診断が下されます。