インフルエンザウイルスの中で、なぜB型だけが顕著にお腹の症状を引き起こしやすいのか。その背景には、ウイルスの生物学的構造とヒトの生体内における増殖特性の違いが存在します。
A型インフルエンザウイルスが主に上気道から肺にかけての気道上皮細胞に集中して感染・増殖するのに対し、B型インフルエンザウイルスは消化管粘膜の上皮細胞にも親和性を持つことが基礎研究で確認されています。ウイルスが腸管粘膜に直接侵入して炎症を引き起こすだけでなく、ウイルスの増殖に伴って生じる全身性の炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)が腸管の血流や神経系を過剰に刺激します。その結果、腸のぜん動運動が異常亢進し、水分吸収が阻害されて急激な腹痛や水様便が生じるのです。
全国の定点医療機関が報告した2026年シーズンの臨床観察データにおいても、A型感染者の下痢発現率がおよそ5〜8%にとどまる一方、B型感染者では約20〜30%に下痢や嘔吐、強い腹痛などの消化器症状が確認されています。特に春先に流行がシフトするB型は、冬場に流行するA型とは異なる臨床像を示す点が最大の特徴です。