真夜中に子どもが泣き叫ぶと、多くの親は「激しい夜泣き」として片付けようとしがちです。しかし、臨床現場において小児科医が明確に区別している通り、夜泣きと夜驚症は医学的にまったく異なる現象です。 夜驚症の本質は、国際睡眠障害分類(ICSD-3)において「ノンレム睡眠覚醒障害」に分類される睡眠時随伴症(パラソムニア)の一種です。人間の睡眠は、浅い眠りで夢を見る「レム睡眠」と、脳を休める深い眠りである「ノンレム睡眠」が周期的に繰り返されます。入眠からおよそ1〜3時間後の最も深いノンレム睡眠(徐波睡眠)の段階から、何らかの刺激で「脳の身体を動かす部分だけが目覚め、意識や理性を司る大脳皮質は深く眠ったまま」という中途半端な覚醒状態に陥ることで引き起こされます。 つまり、目の前で叫び、怯え、暴れている我が子は、「目を開けてパニックを起こしているが、実際は深い眠りの中にいる」のです。
この違いを把握していないと、親は「なぜこんなに激しく泣くのか」「抱っこしても拒否されるのは嫌われているからか」と深い苦悩に陥ります。しかし、脳のメカニズムを理解すれば、暴れる行動は親への反抗でも情緒不安定でもないことが明白になります。