ネット上の情報や日常会話において、しばしば見受けられる誤解が「地球儀のどこを一周しても約4万キロになる」という思い込みだ。これは初等教育における概数表現が定着しすぎた弊害といえる。
大前提として、地球の周囲が約4万キロになるのは「大円(Great Circle)」を通るルート、すなわち地球の中心を通る平面で球体を真っ二つに切った切り口の円周を辿る場合に限られる。赤道はその代表例であり、どの経線(子午線)も地球の中心を通るため大円に近い。
しかし、東西方向の移動であっても、赤道から離れた緯線上を移動した場合は話がまったく変わる。例えば、北緯35度(東京付近)の緯線に沿って東西に一周した場合の距離は、赤道周囲長にコサイン(cos 35° ≒ 0.819)を乗じた数値となり、約32,800kmまで短縮される。さらに北極圏に近い北緯60度であれば、円周は赤道の半分、約2万キロにまで激減する。
また、現代の航空路線で活用される「大圏コース(最短飛行ルート)」も、メルカトル図法の平面地図を見慣れた一般人の直感を狂わせる典型例だ。東京から米・ニューヨークへ飛ぶ際、平面地図上では東へ一直線に向かうのが最短に見えるが、球体上の大円を描くとアラスカ上空を通過する北寄りのルートが最短距離となる。「地球は丸い」と頭では分かっていても、平面地図の認知バイアスに囚われて距離感覚を見誤ってしまうケースは後を絶たない。