不動産コミュニティやSNS上では、「天神ビッグバンでオフィス供給が過剰になり、博多駅東のビルは空室に苦しむのではないか」という懸念が散見される。しかし、この見方は都市経済学および福岡の企業集積メカニズムを見誤った典型的な誤解である。
福岡の不動産鑑定士や大手仲介業者の動向データを精査すると、天神と博多ではオフィス需要の性質が明確に棲み分けられていることがわかる。天神が主にクリエイティブ、ITスタートアップ、地元地場企業の旗艦店、商業集客を軸としているのに対し、博多駅前(特に筑紫口)は本州直通の新幹線停車駅であり、東京・大阪に本社を置く大手上場企業の支社・営業統括機能が集中するエリアだ。
「出張者の移動効率、福岡空港まで地下鉄でわずか5分という利便性を最優先する企業群にとって、天神より博多駅徒歩数分の大型プレートオフィスこそが本命」(福岡地区オフィス仲介デスク担当者談)。つまり、天神での供給増とは無関係に、筑紫口の旧耐震ビルから「新耐震・BCP完備・ワンフロア大面積」のNTT新ビルへ移転したいという潜在需要は極めて潤沢に存在している。