住宅地や都市部で「蜂に似た虫」として目撃通報が集中する昆虫は、生物学的には複数のグループに分かれます。見た目は酷似していても、危険度や生態系における役割は全く異なります。まずは正体候補となる代表的な昆虫の正体と真相を整理します。
最も遭遇頻度が高いのがホソヒラタアブをはじめとするヒラタアブ類です。体長は8〜11ミリ程度で、腹部に鮮やかな黄色と黒の縞模様を持ちます。空中でピタッと静止するホバリング飛行を行い、ベランダの花や観葉植物の周囲を飛び回ります。見た目はハチそのものですが、分類上はハエ目(双翅目)であり、毒針はおろか人を噛む口器すら持っていません。幼虫は植物の害虫であるアブラムシを旺盛に捕食するため、園芸分野では極めて有益な益虫として扱われます。
一方で、本物のハチの中で小型の部類に入るのがコアシナガバチやフタモンアシナガバチ(体長11〜18ミリ)、そしてドロバチ類です。アシナガバチは長い後ろ脚をだらりと下げて飛び、軒下やベランダの手すり裏にシャワーヘッド状の巣を作ります。ドロバチは黒地に細い黄色の帯が入り、泥を使って壁の隙間やエアコン配管周りに筒状の巣を作ります。これらはメスが毒針を持っており、不用意に触れると刺される危険があります。
さらに、甲虫類やガの仲間にも驚くべき擬態昆虫が存在します。トラフカミキリは体長15〜25ミリで、スズメバチにそっくりの黄色と黒の警戒色と俊敏な歩行を見せます。毒はありませんが、ブドウやクワの樹木を食害する農業・園芸上の害虫理由で知られています。また、初夏の日中にベランダの花へ猛スピードで飛来するオオスカシバは、ウグイス色の太い胴体と透明な羽を持ち、ハチのように見えますがガの仲間です。オオスカシバの毒の有無については完全に無毒であり、針も毒毛も一切ありません。