SNSやネット掲示板上では、毎年12月になると「体感時間で言えば、体感の8割は体感的に3か月くらいで終わった」「40代になってから1年が2週間感覚」といった悲鳴に近い投稿が散見されます。この体感時間の加速現象は、単なる気の迷いではなく、神経生理学的な変化がもたらす必然です。
時間知覚に関する実験心理学の研究調査によると、人間の脳内にある神経伝達物質ドーパミンの分泌レベルは加齢とともに緩やかに低下します。ドーパミンは脳内の「内的ペースメーカー」の作動速度を司っており、この分泌が活発な若年期は体内のクロックパルスが高速でカウントされます。その結果、物理的な1秒の間に脳内で多くのパルスが刻まれるため、外の世界の時間がゆっくり流れているように知覚されます。反対に、加齢によってパルスの生成頻度が落ちると、あっという間に外の時計の針が進んでしまうのです。
さらに、脳の「エピソード記憶の圧縮メカニズム」も深く関与しています。初めて訪れる街を歩く時は道順や看板、景色のすべてを意識的に記憶するため、帰り道よりも行き道の方が長く感じられる現象(リターン・トリップ効果)を誰もが経験したことがあるはずです。成人の日常はこの「帰り道」の連続です。通勤電車、見慣れたオフィス、定型化された家事といった予測可能なイベントは、脳が「処理済み」として詳細な記録を省略するため、後から振り返ったときに時間の記憶が極端に圧縮され、「何も起きないまま1年が過ぎた」という錯覚を抱かせることになります。