ゼロ磁場現象を語る上で欠かせない地理的バックボーンが、日本列島を西南日本と東北日本に二分する超巨大断層「中央構造線(MTL: Median Tectonic Line)」の存在です。
この中央構造線に沿って、長野県の諏訪大社、分杭峠、愛知県の豊川稲荷、三重県の伊勢神宮、徳島県の剣山、熊本県の阿蘇山など、日本屈指の霊場や古社が驚くほど直線上に並んでいます。スピリチュアル界隈ではこれを「龍脈」や「レイライン(光の道)」と呼び、強力な大地の気が通るルートだと解釈されてきました。
歴史学および地質考古学の観点からこの一致を紐解くと、古代人の驚くべき観察眼が浮かび上がります。中央構造線のような巨大な断層帯は、地殻破砕に伴って以下のような顕著な地形的特徴を生み出します。
岩盤が細かく砕かれた断層破砕帯からは、枯れることのない良質な地下水が湧き出します。また、地殻変動によって形成された断崖絶壁、巨石の露出、特異な断層崖など、古代の人々が「神の宿る場所(磐座・神体山)」として畏敬の念を抱くランドマークが自然に林立することになります。古代人は方位磁石や地磁気測定器を持っていたわけではありません。湧水という生命維持に不可欠な資源があり、峻険な地形によって軍事・交通の要衝となり、さらには地震などの地殻変動を肌で感じる場所を、畏怖すべき神域として選定していった結果が、現在の「中央構造線上の古社ネットワーク」なのです。
諏訪大社周辺でも、断層境界に位置することから局所的な地磁気測定調査が行われた事例がありますが、社殿全体が磁場ゼロになっているわけではありません。古代の自然信仰と地球科学のダイナミズムが交錯した結果として、現代のパワースポット信仰が形作られています。