「京都の温浴施設は刺青に厳しい」という言説は、半分正しく、半分は誤解に基づいています。現場で入浴を断られるケースの多くは、利用者が訪れた施設の「法的な区分」を把握していないことに起因しています。
日本の温浴施設は、公衆浴場法によって大きく2つに分類されます。1つは、地域住民の日常生活に不可欠な保健衛生施設として位置づけられる「一般公衆浴場(いわゆる街の銭湯)」です。公衆浴場法第4条において、伝染病患者などを除き営業者は入浴を拒絶してはならないと定められており、風紀を乱す明確な行為がない限り、タトゥーの有無のみを入浴拒否の正当な理由とすることは法的に極めて困難です。そのため、京都府浴場組合に加盟する伝統的な銭湯では、外国人観光客や愛好家のタトゥーに対して寛容、あるいは規制を設けていないケースが標準的です。
一方で、入浴拒否のトラブルが多発しているのは「その他の公衆浴場」に分類されるスーパー銭湯、日帰り温泉施設、ホテルや旅館の大浴場です。これらは娯楽・保養を主目的とする私的営業施設であり、施設管理権に基づいて独自の利用規約を設定できます。昭和から平成にかけて暴力団関係者を排除する目的で定着した「入れ墨・タトゥーお断り」の自主規制が、施設側の免責や他客への配慮から2026年の現在も機械的に運用され続けているのが、断られる噂の構造的な真相です。