前鋸筋の作用と解剖学の全貌|肩の痛みや翼状肩甲骨を防ぐ決定打

前鋸筋の作用と解剖学の全貌|肩の痛みや翼状肩甲骨を防ぐ決定打

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前鋸筋の機能不全が極限まで進行した状態として知られるのが、肩甲骨の内側縁が天使の羽のように背中からボコッと浮き出る「翼状肩甲骨(Scapular winging)」です。壁に手をついて体重をかけた際、異常な隆起として顕著に現れます。

翼状肩甲骨を引き起こす主原因は、前鋸筋を唯一支配している長胸神経の麻痺(損傷・絞扼)にあります。頸神経(C5〜C7)から分岐する長胸神経は、首の深層から鎖骨下を通り、胸郭の外側表面という非常に浅い層を長く走行しています。骨や筋肉の深い層に守られていないため、外力や牽引ストレスに対して極めて脆弱という解剖学的弱点を抱えています。

臨床データおよび取材現場で報告される発症の引き金には、以下のような日常的要因が挙げられます。

  • 重いバックパックによる長時間の肩口への圧迫
  • テニスのサーブやバレーボールのアタックなど、腕を頭上に激しく振り抜く牽引ストレス
  • 不適切な姿勢での長時間のデスクワークに伴う斜角筋群での神経絞扼
  • 開胸手術や乳房切除術などの外科的処置に伴う医原性損傷

長胸神経が麻痺すると前鋸筋への神経伝達が完全に遮断され、肩甲骨を胸壁に押し付ける力が消失します。その結果、腕を前方に伸ばすだけで肩甲骨が外側に逃げ、背中から羽が生えたように浮き上がってしまうのです。放置すれば肩の挙上障害だけでなく、重篤な神経痛や姿勢変形へと固定化するため、早期の鑑別が欠かせません。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。