現代の白物家電において、エアコンは極めて高度な自動制御を獲得しました。しかし、その利便性の向上と引き換えに、ユーザー側の心理には「自動お掃除機能がついているのだから、人間は何もしなくて良いはずだ」という危険な認知的偏見(バイアス)が生み出されています。
日本電機工業会(JEMA)等の各種業界調査を紐解いても、フィルター自動清掃機能付きエアコンを所有する世帯の約4割が「3年以上、内部を一度も目視確認したことがない」と回答しています。しかし、エアコンが行う自動おそうじとは、フィルター表面の大きなホコリをブラシで掻き取って小型ボックスに集めるだけの機構です。油煙、タバコの煙、微小なハウスダスト、ペットの皮脂が混ざり合った粘着性の汚れは自動ブラシでは除去できず、年数を重ねるごとにフィルターの網目を窒息させていきます。
ネット上の一部情報サイトでは「オレンジ点滅を無視して使い続けても実害はない」といった無責任な記述が散見されますが、これは明確な誤謬です。吸気経路が目詰まりを起こした状態で酷使を続ければ、熱交換器の熱交換効率は著しく低下します。電力消費量が平時の15〜25%以上も跳ね上がるだけでなく、過負荷運転によってインバーター基板やファンモーターの寿命を削ることになります。
さらに見逃せない盲点が、フィルターやダストボックスの「半嵌まり(不完全装着)」です。ユーザーは正しく戻したつもりでも、左右どちらかのツメが数ミリ浮いているだけで、内部のリミットスイッチが安全装置を作動させます。清掃を終えてリセットボタンを押しても数秒後に再びオレンジ点滅が始まるケースの約7割は、この物理的なセット不良が引き起こしている現場データが存在します。