ロースとヒレの最大の違いは、「どの筋肉の部位か」という点にあります。豚や牛の骨格構造を知ると、なぜ食感や味にこれほどの差が生まれるのかがよく分かります。
まずロースは、首から腰にかけての背中側の筋肉です。漢字で書くと「ロース(Roast)」は英語の「ロースト(焼く)」が語源とされており、肉の外側にしっかりとした脂身の層が付いています。赤身と脂身がバランスよく重なり合っているため、加熱すると脂が溶け出して肉全体に濃厚な旨味とコクが行き渡ります。
一方のヒレ(フランス語でフィレ、英語でテンダーロイン)は、ロースの内側、背骨の腰あたりに左右1本ずつひっそりと存在する細長い棒状の筋肉(大腰筋)です。内臓を支える位置にあり、動物が体を動かす際にもほとんど使われない筋肉であるため、筋組織が硬くならず、非常にキメが細かいのが特徴です。
特に牛ヒレ肉は、1頭から取れる肉全体のわずか約3%程度しかない極めて希少な部位です。運動量が少ないために筋膜が薄く、熱を通しても硬くなりにくい構造を持っています。