矢沢永吉の長いキャリアの中で、1980年代半ばから後半にかけての作品群は、サウンドの洗練と大人の成熟した色気が際立つ黄金期と評されます。『ラスト・シーン』の原点をたどると、発売日は1980年代後半、矢沢永吉がロサンゼルスやロンドンなどの海外ミュージシャンと積極的にコラボレーションを重ね、独自のAOR・ロックサウンドを確立していた過渡期に誕生しました。
本作における矢沢永吉の作詞作曲の体制を振り返ると、作曲はもちろん矢沢本人が手がけ、作詞には数々の矢沢クラシックスを生み出した名作詞家・大津あきらを迎えています。大津あきらが紡ぎ出す言葉は、どこか映画のワンシーンを思わせる映像喚起力と、男の哀愁が滲み出る骨太な美学が特徴です。そこに矢沢の切なくも甘美なメロディラインが重なることで、単なる失恋ソングを超えた重厚なストーリー性が生まれました。
さらに、当時のタイアップ情報としても話題を呼び、大人のライフスタイルや洗練された都会の夜を彩るCMソングなどに起用されたことで、ロックファンのみならず幅広い層の耳に届くこととなりました。派手な装飾を削ぎ落とし、言葉とメロディの力だけで情景を立ち上がらせる卓越した楽曲解説の視点からも、矢沢バラードのひとつの到達点として位置づけられています。