稲川会の歴史を語るうえで、創始者である初代会長・稲川聖城の存在を外すことはできない。戦後の混乱期に静岡県熱海市を足場として頭角を現した稲川聖城は、「義理と人情」を掲げた独特の組織統治を行い、やがて関東を代表する巨大組織へと稲川会を育て上げた。
熱海の街と稲川会館の関わりは単なる物理的な拠点という枠組みを超え、初代のカリスマ性と理念を象徴する聖地としての色彩を強く帯びてきた。館内に残された調度品や書、伝統的な建築様式には、昭和の裏社会を駆け抜けた男たちの美学と価値観が今なお色濃く刻まれている。この精神的遺産が、時代を超えて組織の結束力を支える無形の基盤として機能してきた事実は否定できない。