歴史ある澤瀉屋の看板を背負った四代目市川猿之助は、紛れもなく現代歌舞伎界における最高峰の才能であった。伝統的な古典歌舞伎の技術を完璧に継承しながらも、エンターテインメントとしての可能性を追求し続けた姿は、多くの観客を魅了してきた。
とりわけ、人気漫画を原作としたスーパー歌舞伎II『ワンピース』のメガヒットは、伝統芸能の敷居を大きく下げ、新しい顧客層を開拓した偉業として高く評価された。アクロバティックな宙乗りや豪華な演出は、舞台芸術の新たな扉を開いたと絶賛されたのだ。
しかし、その圧倒的な成功の裏で、興行の成否を一身に背負う孤立感と絶対的な権力構造が歪みを生んでいた。歌舞伎界および芸能界における前近代的な上下関係や、自浄作用の欠如が、最終的に彼自身を崩壊へと導く暗部となったことは否定できない。