病魔との凄惨な闘いを陰で支え続けたのは、妻である松田美由紀だった。夫の病状が進行し、日に日に痩せ細っていく姿を前にしながらも、彼女は優作の「役者としての誇り」を守るため、病名を外部へ漏らさぬよう奔走した。病室でも決して暗い顔を見せず、最期までひとりの男として、父親としての尊厳を保たせようとした妻の存在が、彼の精神的な支柱となっていた。
当時、まだ幼かった長男の松田龍平をはじめとする子供たちにとって、父・優作は恐れ多くも憧れの存在だった。父の死後、龍平自身も俳優の道を歩み始め、日本を代表する実力派として活躍を続けている。彼らが折に触れて語る父の姿には、病に倒れた哀しい記憶だけでなく、最後まで己の美学を貫き通した一人の人間の巨大な魂が宿っている。