お線香に火をつけた際、勢いよく炎が上がると反射的に「フッ」と息で吹き消そうとしてしまう光景が見られます。しかし、これは仏事において最も避けるべきタブー行為とされています。ネット上の質問サイトや仏事相談でも「親族から厳しく注意されて恥をかいた」という体験談が後を絶ちません。
仏教の教理において、人間の「口」は嘘や悪口、愚痴などを発する器官であり、肉食などで穢れやすい部位とみなされてきました。仏教で説く十悪(じゅうあく)のうち、4つが口による過ち(妄語・綺語・悪口・両舌)に該当します。神聖な仏前において、「口から出る息=不浄な息」で仏の清らかな火を消すことは、強い冒涜にあたると解釈されてきた歴史的背景があります。
正しい線香の火の消し方マナーは、以下の2つのいずれかで行うのが鉄則です。
- 手であおいで消す:空いている片方の手、または線香を持った手を素早く上下に扇ぐようにして風を起こし、火を落とす。
- 線香を垂直に引いて消す:線香を持った手を胸の前で素早く真下に引くことで、空気の抵抗を利用して炎を消す。
なお、息で消してはいけない理由には衛生面や安全面の配慮も重なっています。息を吹きかけることで飛び散った灰が仏具を汚したり、周囲の敷物に着火したりする物理的リスクを防ぐ知恵でもあります。