物語の根幹を貫くルールとして提示されていたのが、「山田が成仏するためには、生前果たせなかった綾子との約束(綾子を幸せにすること)を果たさなければならない」という成仏の条件でした。しかし、なぜ綾子が小池と結婚しなかったにもかかわらず、山田は成仏できたのでしょうか。
制作陣が緻密に張り巡らせた伏線を紐解くと、山田の成仏 理由は「結婚という契約の成立」ではなく、南綾子の精神的自立と自己受容の達成にありました。死後、幽霊となって綾子の前に現れた当初の山田は、自らが成仏したいという利己的な動機から綾子に婚活をけしかけていました。しかし様々な男性とぶつかり合い、傷つきながらも自身のペンで物語を紡ぎ出す綾子を見守るうちに、山田の心には「綾子に本当の笑顔を取り戻してほしい」という純粋な利他愛が芽生えていきます。
最終盤、綾子は同期の売れっ子作家・九本凛(関水渚)との対峙や小池との真摯な対話を経て、「他人に価値を決めてもらう必要はない」という確信を得ます。そして消えゆく山田に対し、恨み言ではなく「あなたのおかげで、私は私のままで強くなれた。ありがとう」と心からの感謝を告げました。
他者の承認に依存していた人間が自らの尊厳を取り戻し、自分を遊び捨てたはずの男の冥福を無償の愛で祈る境地に達した瞬間、山田を現世に縛り付けていた未練の鎖は完全に解かれました。光に包まれながら「綾子、お前はもう大丈夫だ」と言い残して消えていった山田の姿は、多くの視聴者の涙腺を崩壊させ、ネットの反応でも「単なるラブコメだと思っていたら上質な人間賛歌だった」と絶賛の嵐を巻き起こしました。