炭治郎が鬼化した直接的な理由は、肉体の崩壊を悟った鬼舞辻無惨が、死の間際に残された全ての血と記憶、そして自らの力と「意志」を炭治郎へ一気に注入・継承させたことにあります。
産屋敷耀哉が無惨へ告げた「人の想いこそが永遠であり、不滅なのだ」という言葉を、無惨は最期の最期で歪んだ形で模倣しました。肉体が陽光で滅び去る恐怖の中で、無惨は自らのエゴを永遠化させる唯一の器として、目の前で事切れていた炭治郎を選定したのです。
無惨が炭治郎を選んだのには、明確な3つの必然性がありました。
第一に、炭治郎が始まりの呼吸である「日の呼吸(ヒノカミ神楽)」を体得した類まれなる使い手であった点です。千年前に無惨を死の寸前まで追い詰めた継国縁壱と同じ呼吸の適性を持つ肉体は、鬼の王の器としてこれ以上ない素質を秘めていました。
第二に、実妹である禰豆子が「太陽を克服した鬼」であったという血筋の共通性です。禰豆子と同じ血を分けた炭治郎であれば、無惨が千年間渇望し続けた「太陽の克服」を成し遂げられるという確信がありました。
第三に、炭治郎がすでに心肺停止状態であり、肉体的な抵抗が極めて弱まっていた点です。無惨は炭治郎の脳と細胞を支配し、「鬼殺隊を殲滅する最強の王」として蘇生させようと目論んだのでした。