本作最大の核心であり、読者が最も心を揺さぶられるのが矢代と百目鬼の関係の着地点です。かつて真誠会の若頭とボディーガードという主従関係にあった2人は、激しい抗争と致命的なすれ違いを経て一度決定的な決別を迎えました。そして4年後、矢代は組を抜けてフリーの立場となり、百目鬼は別の組(綱川組系)の極道として台頭。守る側と守られる側、従う側と従わせる側の構図が鮮やかに反転した状態で再会を果たしました。
自らを傷つけることでしか自己を保てない被虐的な矢代のトラウマに対し、百目鬼は愚直なまでの執着と独占欲をむき出しにしていきます。今後の結末について、ファンの間ではいくつかの有力なシナリオが議論されています。
第一に考えられるのは、裏社会からの完全な離脱と精神的な救済です。矢代を長年縛り付けてきた道心会や三角との因縁、百目鬼の背負う罪が抗争の果てに清算され、2人がヤクザの世界を捨てて静かに生きていく道です。第二には、ハードボイルド作品としてのリアリズムを貫く破滅的エンド(共倒れ)。そして第三には、恋人や主従といった既存の定義に当てはまらない、2人だけの唯一無二の共犯関係を維持し続ける結末です。
作中に散りばめられた「鳥は羽ばたかない」という象徴的なモチーフが、最後に「羽ばたく(呪縛から解放される)」ことを意味するのか、それとも「羽を休める止まり木を見つける」ことを指すのか。ヨネダコウ氏が描く感情の機微から目が離せません。