この価値観の地殻変動は、カルチャーシーンから始まった。原作・久住昌之、作画・水沢悦子による大ヒットマンガ『花のズボラ飯』は、まさにその先駆けだ。単身赴任中の夫を持つ主人公が、残り物や手軽な食材で「手抜きだが絶品」な料理を作り上げて食べる日常系コメディ。この作品が出版業界に与えた衝撃は大きかった。
その後、テレビ東京でのドラマ化を経て、その勢いは決定的なものとなった。宝島社をはじめとする出版社は続々と「手ぬきレシピ」「ズボラ収納」をテーマにしたムック本や書籍を増刷。丁寧な暮らしを求める反動として、「がんばらない暮らし」という新たな一大市場が立ち上がったのだった。