顔画像に対して人が抱く根源的な恐怖を紐解く上で、外すことのできない科学的概念が存在する。ロボット工学者である森政弘博士が1970年に提唱した「不気味の谷現象」だ。人間は、対象が自分たちに似れば似るほど親近感を覚えるが、ある一定の高度な類似性に達した瞬間、突如として激しい違和感と嫌悪感を抱くようになる。
モンタージュ写真は、まさにこの「谷」の真っ只中に位置している。写真としてのリアリティを持ちながらも、皮膚の質感や視線の焦点、筋肉の弛緩状態に人間らしい「生気」が欠落しているのだ。脳の視覚野は「人間である」と認識しようとする一方で、偏桃体が「これは偽物であり異物だ」と警報を鳴らす。この相反する脳内信号の衝突こそが、悪夢に出てくるような不快感の正体である。
映画界においても、この心理的バグは巧みに利用されてきた。上質なサイコホラー作品では、微妙に崩れた人間顔のマスクや不自然な合成顔を登場させることで、観客の無意識下に潜む不安を最大限に増幅させる。モンタージュ写真が醸し出す気味悪さは、意図せず生み出された極上のホラー演出とも言えるのだ。