子供にとって、親は全世界そのものだ。遠野なぎこが幼少期に置かれていた状況は、まさにその世界が狂気によって歪められた密室であった。母からの過剰な容姿への干渉。「常に可愛くありなさい」という強い脅迫的観念。それに背いた時に放たれる暴力や暴言。幼い少女にとって、母の機嫌こそが唯一の生存条件であり、息を殺して顔色を窺う日々が続いた。
子役として芸能界へ足を踏み入れたことも、結果として苦痛を増幅させた。母の欲望を満たすための道具として扱われ、自我を育むべき大切な時期にまっとうな無条件の愛を知る機会を奪われた。この幼少期の歪みこそが、後に彼女を長年苦しめる摂食障害や複雑性PTSDの深甚な引き金となったのは言うまでもない。