火事以前の永沢君は、多少神経質でおとなしい一面はあったものの、現在のように他人の急所を突く毒舌キャラではありませんでした。彼が極端にひねくれた性格へと変貌を遂げた背景には、住まいを失った生活苦と周囲からの「同情の視線」に対する強いトラウマが存在します。
火事の直後から、永沢君は「火」や「煙」「マッチ」といった言葉や火を連想させるものに対して激しい恐怖症を示すようになります。さらに深刻だったのが精神的な孤立感でした。親戚の家や仮住まいでの不自由な暮らしが続くなか、クラスメイトや近隣住民から向けられる哀れみの目を「他人の不幸を面白がっている」「偽善の同情だ」と受け取るようになり、激しい人間不信に陥っていきます。
「どうせ僕の家が燃えたことを笑っているんだろ」という被害妄想が自己防衛として働き、相手が傷つく言葉を先手を打って浴びせる攻撃的なパーソナリティが形成されました。