『鋼の錬金術師』は二度にわたってTVアニメ化されているが、ニーナ事件の描き方には明確なアプローチの違いが存在する。株式会社ボンズが制作を手掛けた2003年の第1作目(通称:水島精二監督版)では、ニーナとエドワードたちが過ごす日常エピソードがオリジナル展開を交えて丁寧に引き伸ばされて描かれた。そのため、視聴者はニーナへの愛着を極限まで高められた状態で悲劇を突きつけられ、精神的なダメージは絶大なものとなった。
一方で、原作に準拠して制作された『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(2009年版)では、テンポ良くエピソードが展開する分、原作特有のスピード感と容赦のない冷徹さが際立つ構成となっている。どちらの作品においても、声優陣の名演と演出の冴えにより、アニメ史に残る名シーンとして屈指の存在感を放っている。