理研のヒエラルキーの頂点に位置するのが、自らの研究室を主宰する主任研究員(PI: Principal Investigator)です。PIのポストを射止める人物の経歴には、ある明確な共通項が存在します。
彼らの大半は、20代後半から30代前半にかけて卓越した原著論文を複数発表し、海外のトップラボへ留学して現地の強力なコネクションを構築しています。単に指導教官のテーマを引き継ぐのではなく、「未開拓の境界領域を自ら切り拓き、新たな研究分野そのものを創出する力」を有している点が決定的な違いです。
現場で語り継がれる天才エピソードも、超人的な記憶力といった類のものではなく、物事の本質を見抜くスピードに関するものが大半です。ある物性物理の主任研究員は、他チームが半年間頭を抱えていた実験データのノイズを見て、即座に「これは誤差ではなく新しい物理現象の兆候だ」と見抜き、わずか数週間の追試でトップジャーナルへの掲載を決定づけたといいます。直観力とそれを裏付ける圧倒的な基礎知識の集積こそが、理研のトップランナーを支える源泉です。