ジャイアンの歌声の劇的な進化を読み解くうえで、声優本人の音楽的ルーツを抜きに語ることはできない。ドイツ出身の父(オペラ歌手)と日本人の母(バロック音楽の演奏家)という音楽一家に生まれ育った木村昴は、幼少期から卓越した音感とリズム感を自然と育んできた。
ジャイアン声優交代の経緯と現在を振り返ると、木村がジャイアン役に抜擢されたのは2005年4月、当時まだ中学3年生(14歳)のときだった。先代である故・たてかべ和也からバトンを受け継いだ当初は、先代の豪快かつ破壊的なトーンを再現することに心血を注いでいた。しかし、彼が青年期を経て音楽的才能を開花させるにつれ、その表現力は唯一無二の領域へと到達する。
木村の真価が世に知れ渡った最大の転機が、2017年に始動した音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』である。木村はイケブクロ・ディビジョン「Buster Bros!!!」のリーダー・山田一郎役を務め、声優界屈指のラッパーとしてシーンの最前線に躍り出た。さらに「好良瓶太郎(こうらびんたろう)」名義で作詞家としても第一線で活躍し、プロのアーティストに歌詞を提供する実力派としての地位を確立している。
まさにこのヒプノシスマイクと木村昴の経歴を通じて研ぎ澄まされた本格的なフロウと声量が、ドラえもん本編のジャイアンソングへと惜しみなく逆輸入されたのだ。木村昴の圧倒的歌唱力がベースにあるからこそ、現代のジャイアンは「リズム感抜群のキラーボーカル」としての説得力を手に入れた。