岐阜駅と富山駅を結ぶ225.8kmの長大路線である高山本線。日々のダイヤ乱れにおいて、高山本線の遅延理由を詳細に分類すると、都市部の路線とは全く異なる過酷な地理的・構造的要因が浮き彫りになります。
国土交通省の鉄道輸送トラブル統計やJR各社の発表資料を精査すると、高山線の運転規制・遅延の約7割が以下の4つの決定的要因によって引き起こされています。
第一に挙げられるのが「土壌雨量指数と連続雨量規制」です。高山線の下呂〜高山間は中山七里をはじめとする断崖絶壁に沿って線路が敷設されています。JR東海では沿線に高密度気象計を配置し、降り始めからの雨量が規制値(時速規制雨量:連続100mm〜、運転見合わせ雨量:連続150mm〜200mm)に達した段階で、安全確保のために機械的な運転見合わせを実施します。雨が小康状態になっても、地中の水分量が安全基準値を下回り、保線係員による徒歩巡回点検(線路点検)が完了するまで運転は再開されません。
第二の要因は、近年特にニュースでも報じられる「倒木および鹿・クマなど野生動物との衝突事故」です。森林保全の担い手不足や山林環境の変化に伴い、線路脇の立ち木が強風や豪雪の重みで架線や線路を塞ぐ事案が激増しています。さらに、山間部を時速80〜100kmで走行する特急ひだがシカと衝突した場合、車両のブレーキ配管損傷確認や現場検証のため、最低でも40分から1時間以上の運転停車を余儀なくされます。
第三に、高山線全線のほぼ全域が「単線」であるという構造的ボトルネックです。一度どこかで20分の遅れが発生すると、信号場やすれ違い可能駅で対向列車が待機せざるを得ず、岐阜から富山に至る全線の列車へドミノ倒しのように遅延が波及します。特急ひだの運休理由として「前を走る普通列車の遅延巻き込まれによる乗務員運用制限・車両繰り不能」が頻発するのはこのためです。