絵筆の上では鮮やかに見えていた色が、紙に乗せると途端にどんよりとした土色になってしまう現象には、明確な科学的理由が存在します。主な原因は減法混色の限界・補色の衝突・黒の誤用の3点に集約されます。
絵の具は色を混ぜれば混ぜるほど光の反射量が減少し、明度と彩度が同時に低下する「減法混色」の性質を持っています。赤・黄・青の3原色がパレット上で無秩序に混ざり合うと、光を吸収して灰色や黒褐色に近づいていきます。混色の手数を増やしすぎることが、肌色が濁る最大の引き金です。
ネット上のQ&Aコミュニティや美術予備校の相談窓口でも、「立体感を出すために黒を少量混ぜたら、まるで泥を塗ったような肌になった」という失敗談が後を絶ちません。人物の皮膚は毛細血管を通る血液の赤や脂肪組織の黄色が複雑に透けて見えているため、無彩色である黒を混入させると、生体特有のみずみずしい血色感が一瞬で失われてしまいます。